日本は世界でも有数の地震大国。地震が起こるたびに「自分の家は本当に安全なのか」と不安になる方も多いのではないでしょうか?特に、家族を守るためには住まいの耐震性をしっかり考えることが欠かせませんよね。
そんな中、「平屋は地震に強い」という話を耳にしたことはありませんか?確かに、平屋は構造上の特性から地震に対して有利だと言われています。しかし、それは本当に事実なのでしょうか?また、どのような工夫をすれば、さらに耐震性を高めることができるのでしょうか?
この記事では、平屋が地震に強い理由を分かりやすく解説し、その耐震性をさらに高めるためのポイントや最新の工法、建材についてもお伝えします。
なぜ平屋は地震に強いと言われるのか?その理由と構造
平屋は、その基本的な構造特性から地震に対して有利な面を持っています。重心の低さ、シンプルな構造、そして上階からの荷重がないことなど、複数の要因が組み合わさって耐震性を高めています。これらの特徴が、なぜ地震に対して効果的なのか、詳しく見ていきましょう。
重心が低く安定していること
平屋の最大の特長の一つは、建物全体の重心が低いことです。重心が低いということは、地震の際に揺れにくく、倒壊しにくいということを意味します。
たとえば、背の高いビルと背の低い倉庫を想像してみてください。地震の際に大きく揺れるのは、重心の高いビルの方です。これは、重心が高いほど、地震のエネルギーを受けやすく、揺れ幅も大きくなるためです。
平屋は、この重心の低さによって、地震の揺れの影響を最小限に抑えることができるのです。具体的には、地震の際に建物にかかる水平方向の力(慣性力)は、重心が高いほど大きくなります。平屋はこの慣性力が小さいため、建物全体が安定し、倒壊のリスクを大幅に軽減できるのです。これは、私たちが日常生活で感じる「重心が低いものは安定している」という感覚と一致します。
※建物が持つ固有周期と地震動の固有周期が共振した場合は、高い建物より中規模の建物の方が大きく揺れることがあります。
構造がシンプルで力が分散しやすいこと
地震の際に建物にかかる力は、構造部材を通じて地盤に伝わります。構造や間取りが複雑な建物では、特定の箇所に力が集中し、その部分から建物の破壊が始まるリスクが高くなります。平屋と比較して二階建て以上の建物は、構造部材同士の接続部が増える、上下階のバランスなど複雑さが増します。
平屋は構造や平面形状がシンプルになることが多く、地震による建物にかかる力をバランスよく地盤に伝えることができます。
これは、地震の揺れに対して建物全体で抵抗する力を生み出すことにつながります。また、構造がシンプルであることは、建築コストの削減にもつながります。使用する部材が少なくなるため、材料費や施工費を抑えることができるのです。
上階の重さによる負担がないこと
二階建て以上の建物では、上階の重さが下の階に大きな負担をかけます。地震の際には、この上階の重さが揺れを増幅させ、倒壊のリスクを高める要因となります。しかし、平屋には上階がないため、このような負担がなく、地震に対して非常に有利です。
具体的には、地震の際に建物にかかる力は、建物の重さに比例します。上階がある建物では、その重さによって下階に大きな力がかかり、特に柱や壁などの構造部材に負担が集中します。しかし、平屋には上階がないため、このような負担がなく、建物全体が安定した状態で揺れに耐えることができるのです。
たとえば、底の広いコップと細長いグラスを想像してみてください。底の広いコップは安定していて倒れにくいですが、細長いグラスは少しの衝撃で倒れてしまいます。平屋はこの底の広いコップのように、重心が低く安定しているため、地震の揺れに強いと言えます。一方、二階建て以上の建物は、細長いグラスのように重心が高く、揺れの影響を受けやすいと言えるでしょう。また、上階がないことは、避難のしやすさにもつながります。万が一の場合でも、すぐに屋外に避難することができるため、安全性の面でも優れていると言えます。
平屋の新築については、関連記事「平屋を新築で建てる際の費用相場やメリット・デメリットを徹底解説!」で解説しています。ぜひ参考にしてみてください!
平屋の耐震性をさらに高めるためのポイント
平屋建ての家は基本的に地震に強い特徴を持っていますが、さらに耐震性を高めるためには、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、構造躯体の強化から基礎工事、屋根材の選択まで、具体的な対策方法について詳しく解説していきます。
構造躯体の強化(耐震等級)
建物の耐震性能を示す指標として、「耐震等級」というものがあります。これは、建物の強度を3段階で表したもので、数字が大きいほど耐震性能が高いことを示します。
耐震等級とは?
耐震等級は、建築基準法で定められた基準に基づいて建物の耐震性能を評価するものです。等級1は、建築基準法で定められた最低限の耐震性能を満たしていることを示し、震度6強から7程度の地震で倒壊しない程度の強度とされています。等級2は、等級1の1.25倍の耐震性能を持ち、等級3は、等級1の1.5倍の耐震性能を持つとされています。
耐震等級3の必要性
特に地震が多い地域や、将来の大地震に備えたいと考える場合は、耐震等級3を取得することをおすすめします。等級3は、消防署や警察署など、災害時の拠点となる建物と同等の耐震性能を持つとされており、非常に高い安全性を確保することができます。
たとえば、大規模な地震が発生した場合でも、建物が倒壊するリスクを大幅に減らすことができるため、家族の安全を守る上で非常に有効です。また、耐震等級が高い建物は、住宅ローンの金利優遇や地震保険料の割引などのメリットを受けられる場合もあります。
地盤調査と適切な基礎
建物を支える基礎は、耐震性を確保する上で非常に重要な要素です。地盤が軟弱な場合は、適切な地盤改良を行うことで、建物の安定性を高める必要があります。たとえば、地盤調査の結果、軟弱な地盤であることが判明した場合は、地盤改良工事を行い、地盤を補強します。
具体的な方法としては、地中の固い地盤まで鋼管の杭を打ち込む鋼管杭工法や、地中に円柱状に流し込んだ改良剤を固め地盤との摩擦で補強する柱状改良工法があります。これらの工事を行うことで、地震の際に建物が沈下したり、傾いたりするリスクを軽減することができます。
軽量な屋根材の選択
屋根は建物の上部にあるため、その重さは地震時の揺れに大きく影響します。軽量な屋根材を選ぶことで、地震時の揺れを抑え、建物への負担を軽減することができます。
たとえば、瓦屋根に比べて、金属屋根やスレート屋根は軽量です。これらの屋根材を選ぶことで、地震時の揺れを抑えるだけでなく、建物の重心を低く保つ効果も期待できます。
ただし、瓦は焼物であるため、紫外線などの影響による劣化に強いという特長があります。一方、金属屋根やスレート屋根は、定期的な塗装工事が必要となる場合があります。そのため、住まいに求める性能に合わせて屋根材を選択することをおすすめします。
正方形に近いシンプルな形状
建物の形状も耐震性に大きく影響します。特に、正方形に近いシンプルな形状は、地震の力を効率よく分散させることができます。
L字型やコの字型などの複雑な形状は、地震時に力が集中しやすく、建物にねじれが生じやすいという問題があります。そのため、できるだけシンプルな形状であることが耐震性では重要です。
耐力壁の配置とバランス
耐力壁は、地震の際に建物にかかる水平方向の力に抵抗する壁です。耐力壁をバランス良く配置することで、建物の耐震性を高めることができます。たとえば、建物の四隅や外周部にバランス良く耐力壁を配置することで、地震の力に対して効果的に抵抗することができます。
地震に強い平屋の構造・工法・建材
平屋の耐震性は、選択する構造や工法、建材によって大きく変わってきます。ここでは、代表的な工法とその特徴、さらには耐震性を高めるための各種部材について詳しく解説します。施工方法や建材の選択は、将来の安全性を左右する重要な要素となります。
木造軸組工法と耐震性
木造軸組工法は、柱や梁といった木の軸を組み合わせて建物の骨組みを組み上げていく工法で、日本で最も多く採用されています。その最大の特徴は、設計の自由度が高いことです。様々な要望に細やかに対応できる柔軟性を持っています。
例えば、空間の大きさに応じて柱や梁の大きさを調整することで、必要な強度を確保できます。さらに、筋交や構造用合板などを用いることで、水平方向の強度(剛性)を高めることも可能です。このように、設計内容に合わせて適切な構造材を選定することで、高い耐震性を実現できる工法と言えます。
この自由度の高さは、「間取りが自由になる」ということだけでなく、「構造材の選定も自由になる」ということです。しかし、構造材の選定や施工方法は、建築会社によって大きく異なるため、耐震性能も会社ごとに差が出ます。そのため、木造軸組工法で家を建てる際には、業者選びが非常に重要となります。
2×4工法(ツーバイフォー工法)と耐震性
2×4(ツーバイフォー)工法は、北米で生まれた建築工法で、2インチ×4インチの規格化された木材を使用して壁や床などの面を構成し、それらを組み合わせて箱型の構造を作るのが特徴です。この工法は、面全体で力を受け止めるため、地震の揺れに対して非常に強いと言われています。
規格化された材料で規格サイズのパネルを作り、組み上げるので間取りの自由度は木造軸組み工法より劣ります。しかし、規格化された工法であるため現場で作業する人による品質の差が出にくいというメリットがあります。
鉄骨造と耐震性
平屋の住宅では、ハウスメーカーなどが提供する軽量鉄骨造がよく用いられます。ビル建築などで採用されている大きな断面の材料ではなく、細くしなやかな鉄骨材によって組み上げられることが特徴です。
木造軸組工法や2×4工法(木質パネル工法)では、壁を面材などで補強することで建物の変形を抑えるという耐震設計が一般的ですが、軽量鉄骨造の場合は、地震の力に対してある程度しなりながら力を受け流す「柔構造」という仕組みを採用しています。そのため、外壁は躯体の変形に柔軟に対応できるような施工方法を選ぶことが重要です。
制振装置や免震装置などの効果
建物の耐震性を高めるためには、構造や工法だけでなく、様々な建材や装置を活用することも有効です。制振装置や免震装置などは、建物の変形や地震の揺れを抑え、建物の被害を軽減する効果があります。
制振装置
制振装置は、耐震構造の建物に設置することで、地震時の建物の揺れを抑え、建物の変形を軽減する装置です。これにより、地震による建物の損傷を抑制する効果があります。制振装置には、ゴムダンパー、鋼製ダンパー、オイルダンパーなど、様々な種類があります。
免震装置
建物と地盤の間に設置される装置です。地震が発生した際に、免震装置が地震の揺れを吸収することで、建物に伝わる揺れを大幅に軽減します。免震装置には、積層ゴムを用いたアイソレータや、オイルダンパーを用いたダンパー式などがあります。ただし、免震装置の設置には、軟弱な地盤では設置が難しい、建物の周囲に一定の空間が必要などの条件があります。
制振装置と免震装置は混同されやすいですが、その違いは以下のとおりです。
- 免震装置: 地震の揺れが建物に直接伝わらないようにする装置。
- 制振装置: 地震の揺れが建物に伝わった際に、建物の変形を抑える(力を軽減する)装置。
つまり、免震は「揺れを遮断」し、制振は「揺れを吸収」する仕組みと言えます。
地震に強い家については、関連記事「地震に強い家とは?その特徴や建てる際の注意点を解説!」で解説しています。ぜひ参考にしてみてください!
熊本地震や震度7の地震における平屋の事例と倒壊率
過去の地震における平屋の被害状況を検証することは、平屋の耐震性を考察する上で非常に重要です。特に、同一地域で複数回の大規模な揺れが発生した熊本地震は、建物の耐震性能を評価する上で貴重なデータを提供しています。ここでは、熊本地震の特徴を踏まえ、平屋の事例と倒壊率について詳しく見ていきましょう。
過去の地震における平屋の被害状況
過去の大地震において、平屋は二階建て以上の建物に比べて被害が比較的少なかったという傾向が見られました。これは、重心の低さやシンプルな構造といった平屋の特徴が、地震の揺れに対して有利に働くためと考えられます。しかし、熊本地震では、従来の認識を覆すような事例も確認されました。
平屋の倒壊率について
一般的に、平屋は二階建て以上の建物に比べて倒壊率が低い傾向にあります。これは、構造的な要因に加え、上階の重さによる負担がないことが大きく影響しています。
しかし、地盤の状況、築年数、耐震基準の適用状況、そして地震の特性など、様々な要因が倒壊率に影響を与えるため、一概に「平屋は絶対に倒壊しない」とは言えません。特に、熊本地震では、従来の耐震基準や、2000年に改正された現行の新耐震基準で建てられた平屋でも倒壊した事例が報告されており、その要因を詳しく分析する必要があります。
熊本地震における平屋の事例
熊本地震は、2016年4月に発生した一連の地震で、特に益城町では短時間のうちに震度7の揺れが2度も観測されるという、観測史上前例のない事態となりました。この地震では、従来の耐震基準や、2000年に改正された現行の新耐震基準で建てられた建物にも被害が見られました。
特に注目すべきは、前震で軽微な被害にとどまった建物が、本震で倒壊するケースが多数発生したことです。これは、一度の地震で建物が損傷を受けると、その後の揺れに対する抵抗力が著しく低下することを示しています。
震度7の地震における平屋の事例
震度7の地震は、非常に激しい揺れであり、建物に甚大な被害をもたらす可能性があります。過去の震度7の地震における平屋の事例を見ると、地盤の状況や建物の構造、築年数などによって被害の程度は大きく異なっています。
一般的に、耐震性の高い建物であれば、震度7の揺れにも耐えることができますが、古い建物や耐震補強がされていない建物は、倒壊や大きな損傷を受けるリスクが高まります。
過去の大地震の教訓を踏まえ、平屋を建てる際には、以下の点に注意することが重要です。
- 構造耐震等級3の有効性
地震に強い家とするためには「耐震等級3」レベルの建物が有効です。耐震等級とは、国が定める住宅性能表示制度により、建物がどの程度の地震に耐えられるかを示したものです。2000年に改正された現行の新耐震基準相当で「等級1」、その1.25倍なら「等級2」、1.5倍なら「等級3」という3つの性能レベルが設定されています。熊本地震の被害状況において、耐震等級3で建てられた建物は無被害又は軽微な被害でした。耐震等級3レベルの建物であれば安全性が格段に高まることが実例として示されています。
↓↓熊本地震の被害状況を取りまとめた資料↓↓
http://kumamoto-fukkou.or.jp/datafolda/data/kumamoto.pdf - 信頼できる業者選び
優れた制度や装置を選んでも、正しい工事を行わなければ安心した住まいにはなりません。打合せ・設計段階から施工段階にいたるまで信頼できる、耐震性に優れた家づくりができるハウスメーカーや工務店を選ぶことが大切です。
これらの点に注意することで、震度7クラスの地震に対しても、安心して暮らせる平屋を実現することができるでしょう。
ハウスメーカーと工務店の違いについては、関連記事「ハウスメーカーと工務店の違いを徹底比較!それぞれの特徴や迷った時の選び方も解説」で解説しています。ぜひ参考にしてみてください!
まとめ:地震に強く安心して暮らせる平屋を建てるために
平屋はその構造的な強みから地震に強いと言われていますが、より安全な住まいを目指すには、耐震性を高める工夫や適切な設計が欠かせません。地盤調査をはじめ、耐震等級の取得や耐震建材の選定、最新の工法を採用することで、地震に対する備えは格段に強化できます。
さらに、過去の地震から得られたデータや事例を参考にすることで、理想の平屋づくりに役立つ具体的なポイントも明確になります。家族が安心して暮らせる住まいを実現するために、一歩ずつ着実に知識を深めていきましょう。
地震への備えは、家づくりの中で最も重要なステップの一つです。この機会に、平屋の魅力と安全性を再確認し、長く安心して暮らせる理想の住まいを一緒に考えてみませんか?さらに詳しい情報が気になる方は、他の記事もぜひチェックしてみてください。あなたの理想の住まいづくりを応援しています!
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