家を建てるのは、人生の中でも大きなイベントの一つです。
しかし、夢のマイホームを叶えるためには、様々な制限を理解しておくことが大切です。
特に、建ぺい率と容積率は、土地選びや家づくりに大きく影響を与える重要な要素です。
「建ぺい率って聞いたことあるけど、何のこと?」
「容積率と建ぺい率って何が違うの?」
「建ぺい率や容積率を守らないとどうなるの?」
そんな疑問をお持ちのあなたのために、この記事では、建ぺい率と容積率についてわかりやすく解説します。
用途地域とは?
まず、建ぺい率や容積率を考える前に、家を建てる土地の用途地域を確認する必要があります。
用途地域とは、都市計画法に基づき、土地の利用目的を定めた区域のことです。
住居地域、商業地域、工業地域など、全部で13種類に分類されており、用途の混在を防ぎ、それぞれの地域に適した街づくりを実現する役割を果たしています。
主な用途地域と特徴
用途地域 | 用途の内容 | 建ぺい率 | 容積率 |
---|---|---|---|
第一種低層住居専用地域 | 低層住宅専用 (高さ10m~12m程度) | 30・40・50・60 | 50・60・80・100・150・200 |
第二種低層住居専用地域 | 低層住宅専用 (小型店舗なども可能) | 30・40・50・60 | 50・60・80・100・150・200 |
第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅専用 | 30・40・50・60 | 100・150・200・300 |
第二種中高層住居専用地域 | 中高層住宅専用 (店舗や事務所も可能) | 30・40・50・60 | 100・150・200・300 |
第一種住居地域 | 住宅がメイン (小型店舗なども可能) | 60 | 200・300・400 |
第二種住居地域 | 住宅がメイン (大型店舗や事務所は不可) | 60 | 200・300・400 |
田園住居地域 | 住宅がメイン (農業の利便性重視) | 30・40・50・60 | 50・60・80・100・150・200 |
準住居地域 | 住宅メイン (道路や自動車関連施設などの利便性重視) | 60 | 200・300・400 |
近隣商業地域 | 商業施設メイン (近隣住民の利便性重視) | 80 | 200・300・400 |
商業地域 | ほぼすべての種類の建物が建築可能 (大規模な工場などは不可) | 80 | 200・300・400・500・600・700・800・900・1000 |
準工業地域 | 工業施設メイン (住居や小型店舗も可能) | 60 | 200・300・400 |
工業地域 | 工業施設メイン (環境破壊の恐れがある工場でも建築可能) | 60 | 200・300・400 |
工業専用地域 | 工業施設のみ (住居不可) | 30・40・50・60 | 200・300・400 |
上記のように、定められた用途地域によって建ぺい率や容積率が異なります。
土地を購入して家を建てる場合は、用途地域を事前に確認し、目的に合った土地を選ぶことが大切です。
用途地域について詳しくは、各市町村のホームページなどでご確認ください。
建ぺい率(建蔽率)とは?
建ぺい率とは、建物の大きさを制限するルールです。
簡単に言うと、土地のどのくらいの部分を建物で覆って良いかを決めるものです。
建ぺい率の必要性
建ぺい率を設ける理由は、主に以下の3つが挙げられます。
1.防災上の安全性確保
建物を密集させすぎると、火災や地震などの災害発生時に延焼や倒壊の危険性が高まります。
建ぺい率を制限することで、建物間の距離を確保し、災害時の被害拡大を防ぐことができます。
2.快適な住環境の維持
建物を密集させすぎると、日当たりや風通しが悪くなり、快適な住環境を維持することが難しくなります。
建ぺい率を制限することで、適度な開放感を確保し、住みやすい街並みを作ることができます。
3.景観の保全
建物を建てすぎると、街並みが単調になり、景観が損なわれる可能性があります。
建ぺい率を制限することで、建物の高さをある程度抑制し、美しい街並みを保つことができます。
建ぺい率の計算方法
建ぺい率は、以下の式で計算できます。
建ぺい率(%) = (建築面積÷敷地面積) × 100
建築面積:建物の接地面積
敷地面積:土地全体の面積
例えば、土地が30坪(約100㎡)で、建物の建築面積が18坪(約60㎡)の場合、建ぺい率は60%となります。
建ぺい率は、真上から見た建物の面積で計算されます。
そのため、2階建ての場合は2階の床面積が大きければ、そちらが建築面積となります。
建物の基礎部分やベランダなども含まれますが、一定の条件を満たすものは除外されます。
また、建ぺい率は、都市計画法で用途地域ごとに定められており、地域によって異なります。
この建ぺい率は、行政機関で定められている数値を超えることはできません。
つまり、たとえ土地が広くても、建ぺい率の制限値を超える大きさの建物は建てられないということです。

容積率とは?
容積率とは、敷地面積に対する建物の「広さ」と「高さ」の合計を制限する指標です。
簡単に言えば、土地に対してどれくらい高さのある建物を建てられるかを決めるルールです。
容積率の重要性
容積率は、日照や採光、通風などの観点から、快適な街並みを形成するためにとても重要な役割を果たしています。
容積率が高ければ、高層ビルや広々とした住宅を建てることができます。
しかし、容積率が高すぎると、日当たりが悪くなったり、風通しが悪くなったりするなどの問題が生じます。
容積率の計算方法(住居区分の場合)
容積率は、以下の式で計算できます。
容積率(%) = (延床面積÷敷地面積) × 100
延床面積:各階の床面積の合計
敷地面積:土地全体の面積
例えば、敷地面積120㎡の土地に、延床面積240㎡の家を建てた場合、容積率は200%となります。
逆に、容積率150%の敷地面積100㎡の土地には、延床面積150㎡までの家を建てることができます。
2階建ての家を建てるとすれば、1階が床面積80㎡、2階が床面積70㎡というイメージです。
容積率は、前面道路の幅員によっても影響を受けます。
前面道路の幅員が12m未満の場合、容積率は「道路幅員に係数0.4を掛けた容積率」と「指定容積率」の小さい方になります。
例
容積率200%の地域で、前面道路幅員が6mの土地の場合
0.4 × 6m = 2.4m
2.4m × 200% = 480%
指定容積率が200%のため、この条件の場合に適用される容積率は、値が小さい方の200%となります。
建ぺい率との違い
容積率とよく似た言葉に建ぺい率があります。
建ぺい率は建物の平面的な広さを制限するルールなのに対し、容積率は建物の立体的な広さを制限するルールと言えるでしょう。
建ぺい率の制限を緩和する方法
建ぺい率と容積率には、条件を満たすことで適用される緩和規定があります。
これらの緩和規定を活用すれば、生活スペースを増やすことが可能です。
住宅や土地の購入を検討している方は、これらをしっかりと理解しておく必要があります。
建ぺい率の制限を緩和できるケースは以下の通りです。
角地に建てる場合
2つの道路に面している土地(角地)に建物を建てる場合、条件により建ぺい率の上限が10%緩和されます。
防火地域・準防火地域に耐火建築物を建てる場合
防火地域・準防火地域に耐火建築物または準耐火建築物を建てる場合、建ぺい率の上限が10%緩和されます。
防火地域とは、火災の被害拡大を防ぐために定められた区域です。
多くの建物が密集している地域や、幹線道路沿いが防火地域に指定されています。
上記2つの条件を両方満たす場合
上記2つの条件を両方満たす場合、建ぺい率の上限は20%緩和されます。
つまり、角地に耐火建築物を建てれば、建ぺい率の上限を最大20%上げることができるのです。

容積率の制限を緩和する方法
容積率の制限を緩和する方法もあります。
地下室
住宅に地下室を設ける場合、住宅部分の床面積の3分の1までが容積率の計算から除外されます。
地下室は、趣味の部屋やホームシアターなど、様々な用途に活用できます。
ロフトや屋根裏部屋
ロフトや屋根裏部屋は、直下床面積の2分の1までが容積率の計算から除外されます。
ただし、高さ制限があるため、居住空間ではなく、収納スペースなどとして使用する必要があります。
バルコニーやベランダ
バルコニーやベランダは、建物の外壁から1m未満であれば延べ床面積に含まれません。
バルコニーやベランダは、開放的な空間としてだけでなく、洗濯スペースやちょっとした休憩スペースとしても活用できます。
ビルトインガレージ
住宅の延べ床面積の1/5までのビルトインガレージも、延べ床面積に含まれません。
車を駐車するだけでなく、趣味の部屋や工房などとしても利用できます。
屋上
屋上は、床面積にカウントされません。
デッキやテラスを設置して、開放的な空間を演出できます。
建ぺい率・容積率を守らなかった場合の落とし穴
建ぺい率や容積率は、快適な街並みを形成するために定められた重要なルールです。
しかし、このルールを守らずに家を建ててしまうと、思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性があります。
具体的には、以下のようなデメリットが考えられます。
1. 住宅ローンを利用できない
住宅ローンを利用するためには、金融機関の審査を受ける必要があります。
この審査において、建ぺい率や容積率などの法令遵守状況も確認されます。
もし、これらの条件を満たしていない住宅であれば、違法建築物とみなされ、住宅ローンが利用できない可能性があります。
2. 住宅を売却できない
将来的に住宅を売却したい場合、不動産会社に仲介を依頼することになります。
しかし、建ぺい率や容積率などの条件を満たしていない住宅は、市場価値がないと判断され、仲介を断られる可能性があります。
建ぺい率と容積率以外の建築規制も理解しよう
家を建てることは、人生の中でも大きなイベントの一つです。
しかし、夢のマイホームを叶えるためには、建ぺい率や容積率以外にも様々な建築制限を理解しておくことが重要です。
ここからは、建ぺい率・容積率以外の主要な建築制限について詳しく解説します。
1. 絶対高さ制限:高層建築の制限
建物の高さには、絶対高さという制限があります。
これは、地域や用途によって定められており、高層建築の建設を抑制する役割を果たします。
絶対高さ制限について詳しく知りたい方は、関連記事「絶対高さ制限とは?適用される用途地域や緩和されるケースをわかりやすく解説」で解説しています。ぜひ参考にしてみてください!
2. 斜線制限:周辺環境への配慮
斜線制限は、前面道路、北側、隣地の敷地に対して、建物の高さを制限するものです。
これは、周辺建物の通風・採光を確保し、良好な住環境を維持するために設けられています。
斜線制限について詳しく知りたい方は、関連記事「斜線制限とは?用途地域との関係性やその他の規制についてわかりやすく解説!」で解説しています。ぜひ参考にしてみてください!
3. 日影規制:日当たりを守る
日影規制は、建物の高さや位置によって、周辺の土地に影が落ちないようにするための制限です。
建物の高さや形状によっては、日影規制に抵触してしまう場合もありますので、注意が必要です。
日影規制について詳しく知りたい方は、関連記事「日影規制とは?用途地域別の規制範囲や注意点をわかりやすく解説!」で解説しています。ぜひ参考にしてみてください!

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建ぺい率と容積率は、家を建てる上で重要な要素です。
用途地域や緩和措置を理解することで、法令遵守をしながらも、理想の住まいを実現することができます。
建ぺい率・容積率に関する知識は、土地選びや家づくりの重要な判断基準となります。
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