一生に一度の大きな買い物である注文住宅。
憧れのマイホームを手に入れるために、多くの人が情報収集に力を入れていることでしょう。
しかし、注文住宅の価格は、想像以上に複雑で分かりにくいものです。
特に、坪単価という指標は、家づくりの指標としてよく用いられますが、誤解を招く可能性も潜んでいます。
そこで今回は、注文住宅の坪単価について、初心者にも分かりやすく解説します。
坪単価とは
坪という単位は、古く奈良時代に定められたもので、現在では登記には平米(㎡)が用いられますが(計量法第3条)、不動産物件の情報では、古くからの慣習として坪という単位がよく使われています。厳密には1坪は3.30579㎡ですが、一般的には3.3㎡として計算されます。
坪単価とは、簡単にいうと1坪あたりの建築費用のことです。
計算方法は、建物の本体価格を延床面積で割ります。延床面積とは、各階の床面積を合計したものです。
例えば、建物の価格が2000万円で、延床面積が40坪の場合、坪単価は2000万円 ÷ 40坪 = 50万円となります。
しかし、坪単価を業者選びの基準として使うには注意が必要です。
なぜなら、坪単価を算出する延床面積の定義には決まりがなく、業者によって計算方法が異なる場合があるからです。
そのため、坪単価だけを単純に比較しても、実際の建築費用の差が分からない可能性があります。
坪単価を賢く活用するための4つの注意点
坪単価は、住宅建築費用の目安として役立つ指標ですが、使い方を誤ると、思わぬ落とし穴に陥ってしまう可能性があります。
そこで、坪単価を見る際に注意すべき4つのポイントを以下にまとめました。
坪単価は小さい家の方が割高になる
坪単価は、一般的に家の大きさと逆比例の関係にあります。
つまり、家が小さくなるほど坪単価は高くなり、大きくなるほど安くなる傾向があります。
例えば、30坪で2100万円の2階建て戸建て住宅の場合、坪単価は70万円となります。一方、45坪で2700万円の住宅だと、坪単価は約60万円と30坪の家より低くなります。
一見すると、家を小さくすれば費用も節約できるように思えますが、必ずしもそうではありません。30坪の家を15坪に縮小した場合、建物価格が半分の1050万円になるわけではありません。
その理由は、キッチンやユニットバス、トイレ、洗面化粧台、玄関ドアといった設備にかかる費用が坪単価に影響を与えるからです。
これらの設備は、家全体の面積に関わらず必要不可欠であり、坪単価の中でも大きな割合を占めます。
建物以外の部分、例えば外壁や屋根、基礎などの費用は、家の大きさによってある程度比例して変化します。
しかし、設備にかかる費用は家全体の面積と比例しないため、小さな家の方が坪単価が高くなるのです。
ただし、家の坪単価だけで建築費用の全体像を判断することはできません。外構費用や諸経費なども考慮する必要があります。
家を建てる際には、坪単価だけでなく、トータルでの建築費用を比較検討することが重要です。
延床面積と施工面積の違いに注意
坪単価を比較検討する際、延床面積と施工面積の違いを理解することが重要です。
延床面積は、建築基準法に基づいて算出される床面積の合計です。ベランダや小屋裏収納、地下室、玄関ポーチなどは含まれません。
一方、施工面積は、上記のような延床面積に含まれない部分も含めた床面積です。
つまり、同じ家でも、施工面積の方が延床面積よりも広くなります。
そのため、施工面積で坪単価を算出すると、延床面積で算出した場合よりも安く見えてしまうのです。
これは、近年、坪単価を安く見せたいというハウスメーカーや工務店が増えているため、施工面積を坪単価の算出基準として利用するケースが増えていると考えられます。
坪単価と本体価格
坪単価は、住宅の建築費用を考える上で役立つ指標ですが、本体価格に含まれる費用と全体費用を把握することが重要です。
本体価格とは、建物の構造や設備にかかる費用です。しかし、土地代や諸経費は含まれていません。
また、坪単価は仕様によっても大きく変動します。
例えば、キッチンや浴室などの設備グレードを上げたり、間取りを変更したりすると、坪単価とは関係なく費用がかかります。
このように、坪単価はあくまで目安であり、実際の建築費用を知るためには、見積もりをしっかりと確認する必要があります。
同じ坪数でも形状で坪単価が変わる
同じ坪数の家でも、形状によって坪単価が大きく変わる場合があります。
例えば、総2階建て(1階と2階が同じ面積の2階建て)のシンプルな家と、複雑な形状をした家は、同じ坪数でも必要な材料や施工の手間が異なり、建築費用にも差が出ます。
複雑な形状の家は、基礎面積が多くなったり、外壁材や屋根材の使用量が増えたりするため、総2階建ての家よりも建築費用が高くなります。
注文住宅の坪単価を左右する要素
注文住宅の坪単価は、家づくりの参考指標としてよく用いられますが、単に数値だけを比較するだけでは、誤解を招く可能性があります。
坪単価に含まれる要素や、坪単価を左右する要素を理解することで、より賢く家づくりを進めることができます。
ここでは、注文住宅の坪単価に影響を与える4つの要素について、詳しく解説します。
ハウスメーカーと工務店の違い
注文住宅を建築する場合、坪単価に影響を与える要素の一つとして、ハウスメーカーと工務店の選択があります。
ハウスメーカーとは、支社や支店を全国に構え、幅広い地域で住宅建築に対応している会社を指します。
一方、工務店は、特定のエリアに限定して営業を行い、地域に根差した活動を展開している建築会社を指します。
一般的に、大手ハウスメーカーは工務店よりも坪単価が高くなる傾向があります。
これは、以下の理由が挙げられます。
- 人件費・運営費
大手ハウスメーカーは、全国展開に伴う人件費や運営費がかさみます。また、支店網の維持や新商品開発にも費用が投下されます。 - 広告費
全国的な知名度を維持するために、テレビCMや雑誌広告などの広告費も多くかかります。
しかしながら、必ずしも大手ハウスメーカーの方が高価とは限りません。
近年では、自社工場で部材を生産することでコストを抑えている大手ハウスメーカーも増えています。
一方、工務店は、限られた地域での営業活動のため、人件費や広告費を抑えられる可能性があります。しかし、高品質な住宅設備や工法を採用していたり、高級路線を志向している工務店の場合、坪単価が高くなることもあります。
使用する構造による違い
注文住宅の坪単価は、使用する構造によって大きく左右されます。
一般的に、日本の注文住宅では木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造の3種類の構造が採用されています。
木造住宅は、3種類の中で最も坪単価が安くなります。木材は鉄筋や鉄骨、コンクリートと比べて安価な素材であること、木造住宅は軽量なため地盤改良や基礎にかかるコストが抑えられることが理由です。
一方、鉄筋コンクリート造は、3種類の中で最も坪単価が高くなります。
鉄筋コンクリートは材料となるコンクリートの価格が高いことに加え、木造や鉄骨造と異なり、工場でプレカットできないため、柱や梁などの構造部分を現場で製作する必要があります。
また、型枠に流し込んだコンクリートが固まるまで待つ時間も必要となるため、工期が長くなり、人件費も高くなります。
鉄骨造は、木造と鉄筋コンクリート造の中間に位置する坪単価となります。
鉄骨は木材よりも高価ですが、コンクリートよりも安価な素材です。
また、工場でプレカットできるため、現場での作業時間を短縮できます。しかし、木造住宅と比べて重量が重いため、地盤改良や基礎にかかるコストが若干高くなります。
設備・建材グレードの影響
注文住宅の坪単価は、使用する設備や建材のグレードによっても大きく左右されます。
設備
キッチンやユニットバスなどの設備は、各メーカーでグレード分けされています。
一般的に、高機能なハイグレード設備を選ぶほど、費用が高くなり、坪単価も高くなります。
例えば、キッチンの場合、標準的なグレードのキッチンと比べて、IHクッキングヒーターや食洗機、浄水器などの高機能設備を備えたハイグレードキッチンを選ぶと、数万円から数十万円高くなる可能性があります。
建材
外壁材や床材、壁紙などの建材も、グレードによって価格差があります。
例えば、外壁材の場合、安価なサイディングと比べて、高級感のある塗り壁は、職人が手作業で施工するため人件費がかかり、坪単価も高くなります。
デザインと間取りの影響
注文住宅の坪単価は、建物のデザインや間取りによっても左右されます。
デザイン
- 凹凸や形状が複雑なデザインは、使用する部材や施工の手間が多くなり、坪単価が高くなります。
- シンプルで直線的なデザインは、部材や施工を効率化でき、坪単価を低く抑えることが可能です。
間取り
- 部屋を細かく区切る間取りは、壁が多くなり、部材や施工の手間が増えるため、坪単価が高くなります。
- ワンルームやリビングを広くした開放的な間取りは、壁が少ない分、部材や施工を減らすことができ、坪単価を低く抑えることが可能です。
注文住宅における坪単価の賢い活用方法
坪単価はあくまで「参考価格」であり、実際の建築費用を判断する唯一の基準ではありません。
なぜなら、坪単価に含まれる内容や、その算出方法に明確な基準がないからです。
住宅会社によっては、本体工事費のみを坪単価に含め、諸経費やオプション費用は別途請求するケースもあります。
また、同じ坪単価であっても、使用する部材や設備のグレード、地盤の状態、施工方法などが異なるため、実際の建築価格は大きく異なってきます。
坪単価を過信して、「坪単価〇〇万円だから、予算内で建てられるはず」と安易に判断してしまうと、見積もり後に予算オーバーで計画が破綻してしまう可能性があります。
そこで、坪単価を賢く活用するために以下の点に注意しましょう。
1. 坪単価に何が含まれているのかを確認する
見積もりをもらう際に、坪単価に何が含まれているのかを必ず確認しましょう。
本体工事費のみなのか、諸経費やオプション費用も含んでいるのかを明確にしてもらうことが重要です。
2. 複数の住宅会社から見積もりを取る
複数の住宅会社から見積もりを取ることで、坪単価だけでなく、各社の見積内容やプランを比較検討することができます。
3. 希望の仕様と坪単価の整合性をチェックする
希望する設備や建材、間取りなどを具体的に決め、それらを反映した坪単価を確認しましょう。
希望の仕様と坪単価に大きな乖離がある場合は、予算やプランを見直す必要があります。
4. 年収とローン返済額を考慮した予算を設定する
坪単価だけでなく、年収やローン返済額を考慮した現実的な予算を設定することが重要です。
無理のない返済計画を立てることで、家計を圧迫することなく、安心してマイホームを建てることができます。
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坪単価は、注文住宅の価格を考える上で重要な指標の一つですが、単一の数字にとらわれず、賢く活用することが大切です。
この記事では、坪単価を理解するための基礎知識から、坪単価を賢く活用する方法まで、詳しく解説してきました。
家づくりは、一生に一度の大きな買い物です。
焦らずにじっくりと検討し、ご自身の希望や予算、ライフスタイルに合った最適な家を見つけることが重要です。
家づくりに関する疑問や不安は、専門家に相談することをおすすめします。
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