家を建てるのは人生最大のイベントの一つ。間取りやデザイン、素材など、夢が膨らみますよね。
でも、実は、家を建てる際には、様々なルールや規制があることをご存知ですか?

その中でも、特に注意したいのが「日影規制」です。
日影規制とは、簡単に言うと、あなたの家が建つことで、周りの家に影ができてしまうのを防ぐためのルールのこと。

「え、そんなの気にしなくても良くない?」と思った方もいるかもしれません。
でも、もしあなたが家を建てようとしている土地が、日影規制の対象地域だったら、建物の高さが制限されたり、建てる場所が限られてしまう可能性があるんです。

せっかく建てた家が、日当たりが悪くて洗濯物が乾きにくかったり、部屋が暗くて気分が滅入ったりしたら、とても残念ですよね。

この記事では、そんな日影規制について、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。

日影規制とは

日影規制とは、建築物による日影が周囲の敷地へ与える影響を制限し、日照権を確保するための法律上の規制です。
具体的には、冬至の日(1年で最も影が長くなる日)を基準に、午前8時から午後4時(北海道は午前9時から午後3時)までの間、一定時間以上日影ができないよう、建物の高さが制限されます。

この規制の目的は、高層建築物の増加に伴い問題となった「日照権の侵害」を防ぎ、良好な住環境を保つことにあります。

日影規制の対象となる建物や、日影の時間制限は、建物の立地する用途地域や自治体の条例によって異なります。
例えば、「第一種低層住居専用地域」では、軒高が7mを超える建物や、地階を除く階数が3階建て以上の建物が規制の対象となるケースが多いです。

なぜ冬至の日が基準なのか?

冬至は1年で太陽が最も南に傾き、影が最も長くなる日です。
この日に日影規制を行うことで、一年を通して最も厳しい日照条件下での日影の影響を評価し、日照権をより確実に保護することができます。

日影規制の表記

日影規制は、「5h-3h/4m」のように表記されることがあります。
この表記には、日影がかかってもよい時間や、日影を測定する高さといった、重要な情報が含まれています。

表記の意味

例)5h-3h/4m

  • 5h:敷地境界線から5~10mの範囲では、日影が5時間まで許される
  • 3h:敷地境界線から10mを超える範囲では、日影が3時間まで許される
  • 4m:日影を測る高さが、地面から4m(約2階の窓の中心)である

つまり、この表記は「冬至の日の午前8時から午後4時までの間、敷地境界線から5~10mの範囲では5時間、10mを超える範囲では3時間までしか日影を作ってはいけない。ただし、地面から4m以上の高さにできる日影は問題ない」ということを意味しています。

測定面の高さが重要な理由

日影を測る高さは、なぜ4mなのでしょうか?
これは、建物の内部に十分な光が入るかどうかを基準としているためです。一般的に、2階建ての住宅の窓の中心は、地面から約4mの位置にあります。

ただし、この高さは地域や建物の種類によって異なります。
例えば、高層マンションでは、3階の窓の中心である6.5mが基準となる場合もあります。また、一戸建て住宅の場合は、1階の窓の中心である1.5mが基準となる場合もあります。

日影規制の重要性

土地を購入したり、家を建てたりする際には、日影規制について事前に確認することが大切です。
日影規制によって建物の設計に制限がかかる場合があり、理想の住まいを実現するために、不動産業者や建築士に相談することをおすすめします。

「用途地域」によって日影規制が変わるって、どういうこと?

都市計画法では、街を住宅地、商業地域、工業地域など、その土地の用途によって9つの「用途地域」に分けられています。
この用途地域によって、建物を建てる際に守らなければならないルールが異なります。

そのルールの一つが「日影規制」です。
日影規制は、建物の影が周りの土地に長くかかってしまい、日当たりが悪くなるのを防ぐためのルールです。

日影規制の対象となる建物

全ての建物が日影規制の対象になるわけではありません。
各用途地域の中で、自治体が定めた特定の建物だけが日影規制の対象となります。

用途地域別の規制範囲

どの建物が規制の対象になるかは、その建物が建てられている用途地域によって異なります。

用途地域規制される
建築物
規制される日影時間
測定した地面からの高さ種別敷地境界線から5m〜10mの範囲敷地境界線から10mを超える範囲
第一種低層住居専用地域

第二種低層住居専用地域

田園住居地域
軒高7m超
地上3階以上
1.5m(一)3時間2時間
(二)4時間2.5時間
(三)5時間3時間
第一種中高層住居専用地域

第二種中高層住居専用地域
高さ10m超4m(一)3時間2時間
(二)4時間2.5時間
6.5m(三)5時間3時間
第一種
住居地域
(一)4時間2.5時間
第二種
住居地域
準住居地域
近隣商業地域
準工業地域(二)5時間3時間
※「商業地域」「工業地域」「工業専用地域」は規制の対象外となります。

日影規制における注意点

日影規制は、建物の高さを制限し、周辺の住環境を守るための法律ですが、その内容は単純ではありません。特に、建物の影が複数の区域にまたがる場合や、異なる規制値が適用されるケースでは、より複雑な状況が生じます。
ここからは、そんな日影規制の複雑な部分をわかりやすく解説します。

1. 日影規制の対象外の区域でも規制の対象となるケース

日影規制は、一般的に住宅地などの一部の地域で適用されるイメージがありますが、実は、用途地域に関わらず、高さが10mを超える建物で、かつ日影規制の対象区域内に影を落とす場合は、規制の対象となる可能性があります。

例えば、商業地域や工業地域など、日影規制の対象外とされている地域に建物を建てたとしても、その建物が隣接する住宅地などに影を落としてしまう場合、日影規制が適用されることがあります。

具体例

自分の土地が商業地域で、日影規制の対象外だとしても、隣地が住宅地で日影規制の対象となっている場合、自分の建物から隣地へ影が差し込むと、日影規制に抵触する可能性があります。

つまり、自分の土地が日影規制の対象外であっても、建物の影が他の土地に影響を与える場合は、日影規制の対象となるということです。

2. 複数の区域にまたがるケース

2-1. 複数の区域にまたがる建築物

一つの建物が、複数の用途地域にまたがっている場合、その建物全体に対して、最も厳しい日影規制が適用されます。
例えば、住宅地と商業地が混在する地域に建物を建てる場合、住宅地の厳しい規制が適用される可能性があります。

2-2. 影が複数の区域にまたがる場合

建物の影が、複数の用途地域にまたがって落ちる場合も、影が落ちているそれぞれの区域の規制の中で、最も厳しい規制が適用されます。
例えば、自分の土地が商業地域でも、隣接する住宅地に影が落ちている場合は、住宅地の規制に従う必要があります。

2-3. 市境をまたがる場合

建物の影が、市町村の境界線を越えて他の市町村に及ぶ場合、影が落ちている先の市町村の規制が適用されます。

3. 同じ敷地内に複数の建物があるケース

同じ敷地内に複数の建物がある場合、それらの建物は、あたかも一つの建物であるかのように扱われ、日影規制が適用されます。

例えば、高層マンションと低層の駐車場が同じ敷地内にある場合、高層マンションが日影規制の対象となるだけでなく、駐車場も一体として規制の対象となる可能性があります。

なぜ、複数の建物が一つとして扱われるのか?

これは、日影規制の目的が、周辺の建物や土地の日当たりを確保することにあるためです。
複数の建物が一つの敷地内に存在する場合、それぞれの建物が独立して影を落とすことで、周辺への影響が大きくなる可能性があるため、まとめて一つの建物として規制することで、より効果的に日照権を保護しようとする考えに基づいています。

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日影規制の緩和措置について

日影規制は、建物の高さを制限し、周辺の住環境を守るための法律です。
しかし、すべての建物に一律に厳しい規制が適用されるわけではありません。
日影規制には、いくつかの緩和措置が設けられており、建物の形状や周囲の環境によって、規制が緩和される場合があります。

なぜ日影規制が緩和されるのか?

日影規制の目的は、周辺の建物や土地の日当たりを確保することですが、すべてのケースにおいて厳格な規制をかけることが必ずしも合理的とは限りません。

例えば、道路に面した敷地では、道路自体が日当たりを確保する役割を果たしているため、建物の影が道路に当たることによる影響は限定的です。
このようなケースでは、日影規制を緩和することで、より柔軟な建築設計が可能になります。

日影規制の緩和条件

日影規制には、いくつかの緩和条件が設けられています。主な緩和条件は以下の通りです。

1. 道路・水面緩和

  • 緩和内容
    道路や川、海などの水辺に接している敷地では、一定の範囲内で日影規制が緩和されます。

  • 理由
    道路や水辺は、建物の影が当たっても、周辺の住環境に大きな影響を与えることが少ないためです。

  • 具体的な緩和方法
    • 道路や水面の幅が10m以下の場合:道路や水面の幅の半分だけ外側に敷地境界があるものとみなします。
    • 道路や水面の幅が10mを超える場合:道路や水面の反対側の境界線から5m内側にあるラインを敷地境界線と見なします。

2. 高低差緩和

  • 緩和内容
    自分の敷地が、隣接する土地よりも1m以上低い場合、日影規制が緩和されます。

  • 理由
    敷地が低い場合は、影が隣地に届きにくいため、日影による影響が小さくなるためです。

  • 具体的な緩和方法
    • 隣地との高低差から1mを引き、残りの半分だけ高い位置に自身の敷地の地盤面があるとみなして、日影規制を設定します。

3. 塔屋緩和

  • 緩和内容
    屋上部分に塔屋(階段室や装飾塔など)がある場合、一定の条件を満たせば日影規制の対象外となることがあります。

  • 条件
    • 本体建築物が高さ10m以下
    • 塔屋の床面積が建築面積の8分の1以下

  • 理由
    塔屋は、建物の主要な部分ではなく、付随的な部分であるため、日影による影響が限定的であるとみなされるためです。

日影規制以外の建築物の高さに関する規制

日影規制以外にも、建築物の高さに関する規制はいくつかあります。
今回は、4つの規制についてご紹介します。

絶対高さ制限とは

住宅を建てる際には、建物の高さを制限する様々な規制があります。
その中でも「絶対高さ制限」は、特に低層住宅地域でよく耳にする言葉です。

絶対高さ制限とは、簡単に言うと、建物の高さを一定の高さまでしか建てられないようにする規制のことです。

北側斜線制限とは

住宅を建てる際に、日当たりや通風を確保するため、様々な建築規制が設けられています。
その一つが「北側斜線制限」です。北側斜線制限は、主に住宅地で、北側の隣家の日当たりを確保するために、建物の高さを制限するものです。

日本では、南からの日当たりを確保することが、快適な住環境を築く上で非常に重要とされています。そのため、北側の隣家の日当たりを妨げ、その住環境を悪化させないために、北側斜線制限が設けられています。

道路斜線制限とは

道路斜線制限は、建物を建てる際に、道路の日当たりや通風を確保するために、建物の高さを制限するルールです。

具体的には、道路の反対側の境界線から一定の距離の範囲内において、建物の高さを一定以下にしなければならないという規制です。

隣地斜線制限とは

隣地斜線制限は、建物を建てる際に、隣家の日当たりや通風を確保するために、建物の高さを制限するルールの一つです。

具体的には、隣地との境界線から一定の距離の範囲内において、建物の高さを一定以下にしなければならないという規制です。

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いかがでしたでしょうか?今回は、建物を建てる際に必ず知っておきたい「日影規制」について、詳しく解説しました。

日影規制は、私たちの生活に密接に関わるものであり、家を建てる際には必ず考慮しなければならない事項です。
日当たりが良い住まいは、心身のリラックスにもつながり、快適な生活を送る上でとても大切です。

この記事では、日影規制の基礎知識から、具体的な注意点、そして緩和措置まで、幅広く解説しました。

しかし、日影規制は、地域や建物の用途によって、細かく異なる部分もあります。
より詳しい情報を知りたい方は、専門家にご相談いただくか、各自治体の建築基準法を詳しく調べてみてください。

この記事が、あなたにとって、家づくりを始める際の参考になれば幸いです。

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